塗料の有毒性について、細心の注意を払うこと!!
塗装の一例
我々はRV−4試作時に用いられた技法を、一般家庭の初心者に対して実証された"最も理想的な"塗料と技法であると紹介するものではない。RV−4試作時に使われた手法は"アルクラッド"地のアルミニウム表面への酸洗い(デュポン社製255Sクリーナー、Martin Senour社製6879 Twin Etch等)のみの単純な下準備を行った後、アロダイン処理(化成皮膜処理)を行い、それからデュポン社の自動車修理用ソリッド・カラー・ポリウレタン塗料"イムロン"を直接塗るものである。アロダインとイムロンとの間にプライマー又はプライマー/サフェーサーを使うことはできたが、重量軽減のために省略されたのである。最低限の塗膜に要する量のイムロンを用いるだけで、望みどおりの滑らかな塗装面を得る事ことができた。アロダイン処理後、外板は繊維状の外板腐食の一因となるあらゆる湿気を除去するために完全に乾燥させた。これはエアー・ノズルによる空気の吹き付けで行われ、全ての金属の継ぎ目とリベットを見落とさないように繰り返し行なった。RV−6試作機は"重量の最小化"の目標に沿って塗装されたが、この場合にはDitzier Durethane製の塗料(?)が使われた。
航空機への塗装は、機体重量を明らかに増加させる。重量の合計は、塗装法と塗料、プライマー及び表面の目止め(サフェーサー、パテ)の使用量次第である。"プライマー無し"のイムロン塗装において、必要最低限の塗装における塗料の重さは約15lbs以上だろうと評価した。全ての外表面への入念な塗装は、この量の塗料を更に2回又は3回塗ることでできた。
補足ながら、厚塗り(重ね塗り)塗装は、塗料の重さが塗装部分の大半である尾部に偏るため、重心位置が後方に移動する傾向がある。操縦舵面のバランスに影響を及ぼすことはRVでは見つからなかった。通常の塗装(1回塗り?)を行った位ではエルロンやエレベータのバランスに目立った変化は生じないだろう。但し、厚塗りを行った場合は、これら操縦舵面の再バランス取りやカウンター・バランス・ウェイト追加の必要を迫られることになるかもしれない。
マスキング
色の塗り分けやピン・ストライプのためのマスキング・テープ貼りは塗装作業時間の大部分を費やす。直線のマスキングは硬いテープでも十分だが、ちゃんとした正しい曲線や"湾曲した"曲線を得るには技術がいる。ありふれた金物屋にあるマスキング・テープではハッキリとした線の塗分けにはいい結果が得られない。なぜなら端面の"裁ち切り"の仕上がりがあまりにも甘いからである。プラスティック"デコレーター"テープは最適なパリッとしたシャープな端面が得られるが、幾分高価である。プラスティック・エレクトリカン・テープ(絶縁用ビニール・テープ?)はかなり良い作業ができ、比較的安価である。"スコッチ"テープも良いが、塗装作業後にテープを剥がすことが大変である。
RVの持つ速度性能にどの位の影響を与えるのかは不明であるが、平滑で気流が自由に流れる表面の方が凹凸のある表面より空気抵抗の減少に寄与することに疑いはない。機体塗装部全体が塗装前のパテやサフェーサーによる目止めと、平滑化が十分にされていないと、塗装面が完全に平滑になるまで仕上げの研磨を行うことになる。この作業には多くの労力を伴い、重量の増加を招き、製作者が98%の完成よりも100%の飛行機の完成を求めないと、おそらく賢明な結果にはならないだろう。必要なやるべき作業を行うことによって残る2%の価値が高いものとなる。
一般的に塗装作業には、仕上げ磨きなしに可能な限り平滑な塗装表面となるように、必ず防塵対策が施された場所で製作者は作業を行うべきである。翼幅方向のストライプの塗り分けは翼の前縁に近接させること避けるべきである。翼幅方向の凹凸による翼型の境界層制御への影響について書かれていることは、気難しい特性の先尾翼機では重要なことである。一つでも凹凸が前縁に近い翼幅方向にあれば、境界層流を分裂させて層流を乱し、抗力の増加と揚力の減少へと繋がるからである。先尾翼機では、これは性能だけでなく、安定性や操縦性にも重大な影響を及ぼす。RVは伝統的な機体形態であり、層流翼型を使用していないので、翼表面の凹凸の影響は比較的少ない。けれども翼前縁先端から数インチ以内の凹凸のある塗り分けは、おそらく失速速度と最大速度への影響が測定できるほどの結果をもたらすだろう。塗り分けによる影響を最小とするために前縁から8−9インチ以上、それでもなお可能な限り平滑にするように研磨すべきである。